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解離性障害ってどんな病気?精神科看護師がわかりやすく解説
「解離性障害ってよく聞くけど、どんな病気なの?」「記憶がなくなるって本当?」「トラウマと関係があるの?」
解離性障害は、精神科の病気の中でも特にわかりにくい病気のひとつです。あまり聞き慣れない疾患ですが、実は意外と身近に起こりうる状態でもあります。この記事では、精神科看護師として長年働いてきた私が、解離性障害についてわかりやすく解説します。
解離性障害とは何か——基本をわかりやすく
解離性障害とは、意識・記憶・感情・行動・自分自身の感覚などがバラバラになってしまう状態が続く病気です。
「解離」という言葉は難しく聞こえますが、実は誰でも軽い解離を経験したことがあります。例えば、「車を運転していたら、気づいたら目的地についていた」「映画に夢中になって、周りのことを忘れていた」——これも軽い解離の一種です。解離性障害は、この「解離」が日常生活に支障が出るほど強く・頻繁に起きている状態です。
「解離」ってどんな状態?
解離とは、本来つながっているはずの意識・記憶・感情・感覚がバラバラになってしまうことです。
- 自分が自分でないような感覚(離人感)
- 現実が現実でないような感覚(現実感の喪失)
- 気づいたら時間が経っていた(記憶の空白)
- 自分の体を外から見ているような感覚
解離は、強いストレス・トラウマから心を守るための「心の防衛反応」として起きると考えられています。「あまり自分には関係ない」と思いがちですが、強いストレスが続く環境では誰にでも起こりうる状態です。
解離性障害の主な種類
解離性健忘
重要な個人的情報・出来事の記憶が突然思い出せなくなる状態です。自分の名前・家族のこと・過去の出来事など、本来覚えているはずのことが思い出せなくなります。特定のトラウマ体験だけ思い出せない「限局性健忘」と、自分の人生全体の記憶がなくなる「全般性健忘」があります。
解離性同一症(DID)
以前は「多重人格障害」と呼ばれていた状態です。一人の人の中に、複数の異なる人格(アイデンティティ)が存在する状態です。人格が切り替わると、声・話し方・行動・好みが変わることがあります。人格が切り替わった間の記憶がないことが多いです。
離人症・現実感喪失症
自分が自分でないような感覚(離人感)・現実が現実でないような感覚(現実感の喪失)が続く状態です。「夢の中にいるみたい」「自分の体を外から見ているみたい」という感覚が続きます。
解離性障害の原因
解離性障害の多くは、強いトラウマ体験が原因と言われています。
- 子どもの頃の虐待(身体的・性的・精神的)
- 深刻な事故・災害の体験
- 戦争・暴力被害
- 長期にわたるいじめ・ハラスメント
特に子どもの頃に繰り返し受けたトラウマが、解離性障害の大きな原因になることが多いです。子どもは強いストレスから心を守るために「解離」を使いやすく、それが繰り返されることで解離性障害に発展することがあります。ただし、トラウマ体験があれば必ず解離性障害になるわけではなく、個人差があります。
解離性障害の症状
記憶に関する症状
- 重要な出来事の記憶がない
- 気づいたら時間が経っていた(タイムロス)
- 自分がやったはずのことを覚えていない
自分自身に関する症状
- 自分が誰なのかわからなくなる
- 自分の体が自分のものでない感覚
- 現実が現実でないような感覚
行動に関する症状
- 気づいたら見知らぬ場所にいた
- 自分がやったはずのことをした記憶がない
- 声・話し方・行動が急に変わる(DIDの場合)
「気づいたら時間が経っていた」「自分がやったはずのことを覚えていない」——これらの症状は、本人にとって非常に混乱を招くものです。「自分はおかしいのかな」「信じてもらえないかもしれない」と一人で抱え込んでしまう方も多いです。あまり聞き慣れない疾患ですが、こういった症状が続いているなら、専門家に相談することが大切です。
解離性障害の治療方法
心理療法が中心
トラウマに焦点を当てた心理療法
トラウマの記憶を安全な環境で少しずつ処理していく治療法です。EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)が効果的とされています。
認知行動療法
解離が起きるパターン・引き金(トリガー)を理解して、対処法を学んでいく治療法です。
安定化療法
トラウマを直接扱う前に、まず日常生活を安定させることを目指す治療法です。安全感・安心感を取り戻すことが最初のステップになります。
薬物療法
解離性障害そのものを「治す」薬はありませんが、併発しているうつ症状・不安感・睡眠障害などに薬が使われることがあります。
日常生活で気をつけること
トリガーを把握する
何が解離のきっかけ(トリガー)になるかを知っておくことで、事前に対処しやすくなります。
グラウンディングを活用する
解離が起きそうなとき、「今・ここにいる」という感覚を取り戻すグラウンディングが助けになります。足の裏を床につける・深呼吸をする・周りにあるものの色を数えるなどの方法があります。
無理に思い出そうとしない
記憶がない部分を無理に思い出そうとすることは、症状を悪化させることがあります。
家族・周りの人ができること
「嘘をついている」と思わない
記憶がないことを「嘘をついている」「仮病だ」と思ってしまう方がいます。でも解離性障害は本人が意図してコントロールできるものではありません。
驚かない・落ち着いて対応する
人格が切り替わったとき・解離が起きたとき、驚いたりパニックになったりすると、本人の不安が高まります。落ち着いた声・態度で関わることが大切です。
「今・ここにいる」ことを伝える
解離が起きているとき、「今は〇〇にいますよ」「私はここにいます」と穏やかに伝えることが助けになります。
精神科の現場で感じること
解離性障害は、外から見えにくい病気です。「普通に見える」「話せている」のに、記憶がなかったり・感情が麻痺していたりする——本人が感じている苦しさは、周りには伝わりにくいことが多いです。
あまり聞き慣れない疾患ですが、強いストレスやトラウマが引き金になることを考えると、意外と身近に起こりうる状態だと感じています。「今ここにいますよ」「安全ですよ」という言葉かけが、解離から現実に戻るきっかけになることがあります。安心できる場所と人の存在が、回復の大きな力になる——これは解離性障害の患者さんと関わっていて特に感じることです。
まとめ
- 解離性障害は意識・記憶・感情などがバラバラになってしまう病気
- 誰でも軽い解離を経験することがある——意外と身近な状態
- 主な種類は解離性健忘・解離性同一症(DID)・離人症など
- 強いトラウマ体験が原因になることが多い
- 治療は心理療法(EMDR・認知行動療法・安定化療法)が中心
- 日常生活ではトリガーの把握・グラウンディングが大切
- 家族は「嘘をついている」と思わず、落ち着いて関わることが大切
- 安心できる場所と人の存在が回復の大きな力になる
よくある質問
Q. 解離性障害は治りますか?
A. 適切な治療・支援によって、症状が改善することがあります。ただし回復には時間がかかることが多く、焦らず主治医・カウンセラーと一緒に進めることが大切です。
Q. 解離性同一症(多重人格)は本当にあるのですか?
A. あります。映画やドラマで誇張されて描かれることが多いですが、実際に存在する状態です。本人にとって非常に辛い体験であることを理解することが大切です。
Q. 解離が起きているとき、どう対応すればいいですか?
A. 落ち着いた声で「今・ここにいますよ」「安全ですよ」と伝えてください。驚いたりパニックになったりすると、本人の不安が高まることがあります。
Q. 解離性障害はどこで診てもらえますか?
A. 精神科・心療内科で診てもらえます。トラウマ専門の心理士がいるクリニックもあります。受診前に電話で確認することをおすすめします。
