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アルコール依存症ってどんな病気?精神科看護師がわかりやすく解説
「お酒が好きなだけじゃないの?」「意志が弱いから飲んでしまうんじゃないの?」「アルコール依存症って治るの?」
アルコール依存症は、意志の弱さではなく、脳の病気です。精神科でも非常に多く見られる疾患で、再入院が多く・家庭崩壊につながることも少なくありません。この記事では、精神科看護師として長年働いてきた私が、アルコール依存症についてわかりやすく解説します。
アルコール依存症とは何か——基本をわかりやすく
アルコール依存症とは、飲酒のコントロールができなくなり、飲み続けることをやめられなくなった状態のことです。「お酒が好きなだけ」「意志が弱いから飲んでしまう」のではなく、脳がアルコールに依存してしまった状態であり、本人の意志だけではコントロールするのが難しくなっています。アルコール依存症は進行性の病気です。放置すると身体・精神・社会生活に深刻な影響を及ぼします。
アルコール依存症の症状
飲酒に関する症状
- 飲む量・回数をコントロールできない
- 「今日は飲まない」と決めても飲んでしまう
- 朝から飲む・隠れて飲む
- 飲まないと手が震える・汗が出る(離脱症状)
- お酒のことが頭から離れない
離脱症状(急にやめたときに出る症状)
手の震え・発汗・不安感・不眠・頭痛・吐き気——重症の場合はけいれん・幻覚(アルコール離脱せん妄)が出ることがあります。離脱症状は命に関わることがあるため、自己判断で急にやめることは危険です。必ず医師の管理のもとで断酒を進めることが大切です。
アルコール依存症の身体への影響
アルコール依存症は長期化すると、全身に深刻な影響が出てきます。
- 肝臓:脂肪肝→アルコール性肝炎→肝硬変→肝がん
- 脳・神経:ウェルニッケ脳症・認知症・記憶障害・末梢神経障害
- その他:膵炎・胃炎・心臓への影響・免疫力の低下
精神科での治療——教育入院とは?
アルコール依存症の治療の中心は断酒です。「減酒」ではなく「完全に断つ」ことが基本になります。
教育入院
教育入院とは、アルコール依存症について学び・断酒の動機を高めるために行われる入院プログラムです。アルコール依存症についての講義・グループミーティング・カウンセリング・身体の治療・退院後の生活計画を立てることなどが行われます。期間は一般的に2〜3ヶ月程度が多いです。
薬物療法
抗酒薬(飲酒すると不快な症状が出る薬)・断酒補助薬(飲酒欲求を抑える薬)などが使われることがあります。
「ちょっとくらいなら」が一番危険
アルコール依存症の治療で大きな壁になるのが、周囲からの「ちょっとくらいいいじゃないか」という言葉です。
治療中にもかかわらず、飲み会の席で「ちょっとくらい飲んでも大丈夫でしょ」と勧められることが多いと聞きます。アルコール依存症の方にとって、「ちょっとの一杯」が再発のきっかけになることがあります。本人だけの力ではどうにもならないことが多く、家族を含め周囲の人たちに「病気なんだ・治療中なんだ」と知ってもらうことがとても大切です。まだまだアルコール依存症が病気として周知されていない部分があり、そこが難しさのひとつだと感じています。
断酒中の人へのサポートで大切なこと
- 「ちょっとくらい」「一杯だけ」とお酒を勧めない
- 「病気だから飲めない」ということを周囲に理解してもらう
- 飲み会への参加を無理に勧めない
- 断酒していることを応援する声かけをする
断酒を続けるために——退院後の生活
アルコール依存症の治療で最も難しいのが、退院後に断酒を続けることです。
- 定期的な外来通院を続ける
- 自助グループ(AA・断酒会)に参加する
- 飲酒のきっかけになる環境・人間関係を避ける
- ストレスをお酒以外の方法で発散する習慣を作る
自助グループについて
AA(アルコホーリクス・アノニマス)・断酒会など、同じ悩みを持つ仲間と繋がることが、断酒継続の大きな力になります。
地域との関わり・支援サービス
退院後の生活を支えるために、地域のサービスを活用することが大切です。精神科デイケア・訪問看護・相談支援事業所・保健所——こういったサービスをうまく活用することで、孤立を防ぎ・断酒を続けやすくなります。保健所では本人だけでなく家族からの相談も受け付けています。
家族への影響——家庭崩壊を防ぐために
アルコール依存症は、本人だけでなく家族への影響も深刻です。再入院が繰り返される中で、家庭崩壊につながるケースも少なくありません。
イネーブリングに注意する
「お酒を買ってきてあげる」「飲んでいることを隠してあげる」——こういった行動は本人の回復の妨げになることがあります。
家族自身のケアも大切
アルコール依存症の家族を支えることは、大きな負担になります。アラノン(Alanon)という家族向けの自助グループがあります。家族自身も支援を受けることが大切です。
再入院が多い理由——終わりが見えない難しさ
アルコール依存症は再入院が多い疾患のひとつです。ストレス・孤独から再び飲酒してしまう(スリップ)・退院後に通院をやめてしまう・「少しくらいなら大丈夫」という過信——こういったことが再入院につながります。
アルコール依存症は「終わりが見えない」難しさがあります。再入院を繰り返しながら・スリップしながら——それでも少しずつ断酒期間を延ばしていく。一直線の回復ではなく、行きつ戻りつしながら進んでいく病気です。「またか」ではなく「また一緒に頑張りましょう」という気持ちで関わることが大切だと感じています。依存症は本人だけの力ではどうにもならないことが多いです。周囲の理解・サポート・地域のつながりが、回復の大きな力になります。
スリップを「失敗」と思わないこと
一度お酒を飲んでしまっても、それを「失敗・終わり」と思わないことが大切です。スリップから立ち直ることも、回復の一部です。
精神科の現場で感じること
アルコール依存症はまだまだ「病気として」周知されていない部分があります。「お酒の問題くらいで」と思われることがありますが、家庭崩壊・身体への深刻な影響・社会生活の崩壊——アルコール依存症は精神疾患の中でも特に影響が大きい病気のひとつです。
本人・家族・職場・地域——みんなで「病気なんだ・治療中なんだ」と理解することが、回復への大きな力になります。早めに専門家に相談することが、一番の近道です。
まとめ
- アルコール依存症は意志の弱さではなく脳の病気
- 離脱症状は命に関わる——自己判断で急にやめない
- 教育入院でアルコール依存症を学び・断酒の動機を高める
- 「ちょっとくらい」という言葉が再発のきっかけになる——周囲の理解が大切
- 退院後は自助グループ・通院・地域のサービスを活用する
- 再入院・スリップを「失敗」と思わない——終わりが見えない難しさがある
- 本人・家族・地域みんなで「病気なんだ」と理解することが回復の力になる
よくある質問
Q. アルコール依存症はどこで診てもらえますか?
A. 精神科・心療内科・アルコール専門外来で診てもらえます。かかりつけ医に相談してみてください。
Q. 断酒中の家族にお酒を勧めてしまいました。どうすればいいですか?
A. まず「病気だから飲めない」ということを正しく理解してください。今後は勧めないことが大切です。家族向けの自助グループ(アラノン)に相談することもおすすめします。
Q. 家族がアルコール依存症かもしれません。どうすればいいですか?
A. まず保健所・精神科・アラノン(家族向け自助グループ)に相談してみてください。本人が受診を拒否している場合でも、家族だけで相談することができます。
Q. スリップしてしまいました。もう回復できないのでしょうか?
A. スリップは回復の過程のひとつです。「失敗・終わり」ではありません。すぐに主治医・支援者に連絡して、また一緒に頑張りましょう。あきらめないことが大切です。
