精神科でよくある急変対応と対処法【現役看護師が手順を解説】

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精神科でよくある急変対応と対処法【現役看護師が手順を解説】

「精神科は急変が少ない」と言われることがあります。確かに一般病棟と比べると急変の頻度は少ないですが、ゼロではありません。

むしろ精神科ならではの急変があります。転倒・過呼吸・自傷行為……一般病棟とは違う対応が求められる場面が多く、最初は戸惑うことも多いです。

この記事では、精神科でよくある急変の種類と、その具体的な対応手順をお伝えします。これから精神科で働く方や、対応に自信がない方の参考になれば嬉しいです。

精神科の急変の特徴

一般病棟の急変と大きく違うのは、身体的な急変よりも精神症状に関連した急変が多いことです。

ただし、精神科の患者さんも高齢化が進んでいるため、転倒・誤嚥・心肺停止などの身体的な急変も起こります。「精神科だから身体の急変は少ない」と油断せず、常に観察を続けることが大切です。

① 転倒・外傷への対応

なぜ起きやすいの?

精神科の患者さんが転倒しやすい理由はいくつかあります。

  • 向精神薬の副作用による眠気・ふらつき
  • 高齢患者さんの増加
  • 夜間の不穏による無理な行動
  • 病棟内を自由に歩き回れる環境

特に夜間・早朝は転倒リスクが高く、注意が必要です。

対応手順

STEP1 安全確認・声かけ
倒れている患者さんを発見したら、まず「大丈夫ですか?」と声をかけます。意識があるか、反応はあるかを確認します。

STEP2 応援を呼ぶ
一人で抱え込まず、すぐに他のスタッフを呼びます。「○号室で転倒、応援お願いします」と具体的に伝えます。

STEP3 外傷・バイタル確認
頭部・顔面・四肢に外傷がないか確認します。バイタルサイン(血圧・脈拍・呼吸・体温)を測定します。頭を打っている場合は特に注意が必要です。

STEP4 医師への報告
「○○さんが転倒、頭部に打撲あり、バイタルは○○です」と簡潔に報告します。医師の指示を仰ぎ、必要に応じてレントゲン・CT検査を行います。

STEP5 記録・再発防止
転倒の状況・発見時の様子・対応内容を記録します。転倒リスクが高い患者さんには、ベッドの高さ調整・センサーマット設置・ナースステーション近くへの移動など、再発防止策を検討します。

② 過呼吸・パニック発作への対応

なぜ起きやすいの?

精神科の患者さんは不安・ストレスから過呼吸やパニック発作を起こすことがあります。面会後・行事の後・入院したばかりの時期などに多い印象があります。

症状の特徴

  • 呼吸が速くなる・息苦しさを訴える
  • 手足のしびれ・けいれん
  • めまい・動悸
  • 「死にそう」「苦しい」と強い恐怖感を訴える

見た目はとても辛そうですが、適切に対応すれば落ち着いてくることがほとんどです。

対応手順

STEP1 落ち着いた声で寄り添う
「大丈夫ですよ、ここにいますよ」と穏やかに声をかけます。こちらが慌てると患者さんの不安がさらに高まります。まず自分が落ち着くことが第一です。

STEP2 安全な場所に誘導する
人目が多い場所は避け、静かな場所に移動します。座れる場所を確保して、楽な姿勢をとってもらいます。

STEP3 呼吸を整えるよう促す
「私と一緒にゆっくり息を吸いましょう」と声をかけながら、ゆっくりした呼吸を促します。鼻から4秒吸って、口から8秒かけてゆっくり吐く——これを一緒にやるだけで落ち着いてくることが多いです。以前はペーパーバッグ法(袋を口に当てる方法)が使われていましたが、現在は推奨されていないので行わないようにしてください。

STEP4 バイタル測定・医師への報告
症状が落ち着いたらバイタルを測定します。症状が強い・長引く場合は医師に報告して指示を仰ぎます。

③ 自傷行為への対応

精神科での自傷行為

自傷行為は精神科では決して珍しくありません。リストカット・頭部打撲・異食(食べてはいけないものを食べる)など、さまざまな形があります。発見したときは焦りますが、冷静に対応することが大切です。

対応手順

STEP1 安全確保・出血対応
まず患者さんの安全を確保します。出血がある場合は清潔なガーゼや布で圧迫止血します。傷の深さ・範囲を確認します。

STEP2 応援・医師への報告
すぐにスタッフを呼び、医師に報告します。「○○さんが自傷、右前腕に切傷あり、出血中です」と具体的に伝えます。

STEP3 責めない・落ち着いて関わる
「なぜこんなことをしたの!」と責めるのはNGです。患者さんはすでに自分を傷つけるほど追い詰められています。「気づけてよかった」「ここにいるよ」という姿勢で関わります。

STEP4 処置・記録
医師の指示のもと処置を行います。自傷に至った経緯・状況・傷の状態・対応内容を記録します。

STEP5 再発防止策の検討
自傷のリスクが高い患者さんには、危険物の管理強化・定期的な観察頻度の増加・医師・心理士との連携など、チームで再発防止策を考えます。

④ 身体的急変(心肺停止・意識消失)への対応

精神科でも心肺停止は起こります。高齢の患者さんや、身体合併症のある患者さんには特に注意が必要です。

対応手順

STEP1 意識・呼吸確認
「大丈夫ですか!」と大きな声で呼びかけ、肩を叩きます。反応がない・呼吸がない場合はすぐに次のステップへ。

STEP2 応援・救急車要請
大声で応援を呼び、AEDを持ってくるよう伝えます。院内の緊急コールを使います。

STEP3 胸骨圧迫の開始
呼吸がない場合はすぐに胸骨圧迫を開始します。1分間に100〜120回のリズムで、胸が5cm程度沈むよう強く押します。

STEP4 AEDの使用
AEDが到着したらすぐに電源を入れ、音声ガイドに従って操作します。

STEP5 医師・救急への引き継ぎ
医師が到着したら状況を報告して引き継ぎます。

急変対応で大切にしていること

一人で抱え込まない
どんな状況でも、まず応援を呼ぶことが基本です。「これくらい自分で何とかしよう」は危険です。

落ち着いて行動する
患者さんはスタッフの雰囲気を敏感に感じ取ります。こちらが慌てると患者さんの不安も高まります。深呼吸して、まず自分が落ち着くことが第一です。

記録をしっかり残す
急変の状況・時間・対応内容を正確に記録することが大切です。後の振り返りや、次のスタッフへの申し送りに役立ちます。

振り返りをする
急変対応の後は、チームで振り返りをすることが大切です。「あの対応で良かったか」「次はどうするか」を話し合うことで、チーム全体のスキルが上がります。



まとめ

精神科でよくある急変と対応手順をお伝えしました。

  • 転倒・外傷:安全確認→応援→バイタル→医師報告
  • 過呼吸・パニック発作:落ち着いた声で寄り添い→呼吸を整える
  • 自傷行為:安全確保→責めない→医師報告→再発防止
  • 心肺停止:意識確認→応援・AED→胸骨圧迫

どんな急変でも「一人で抱え込まない」「まず落ち着く」「記録を残す」が基本です。経験を重ねるうちに落ち着いて対応できるようになります。一人で頑張りすぎず、チームを頼りながら乗り越えていきましょう。

次の記事では、患者さんから暴言・暴力を受けたときの対処法について書いていこうと思います。お楽しみに!

よくある質問

Q. 精神科の急変対応は一般病棟と違いますか?
A. 基本的な手順は同じですが、精神科ならではの急変(自傷・過呼吸・パニック発作など)への対応が求められます。また患者さんの精神状態を考慮した声かけや関わり方が重要になります。

Q. 自傷行為を発見したとき、どう声をかければいいですか?
A. 「なぜこんなことをしたの」と責めるのは避けてください。「気づけてよかった」「ここにいるよ」という姿勢で関わることが基本です。処置が終わった後に、落ち着いた状態で気持ちを聞いてみてください。

Q. 過呼吸のときにペーパーバッグ法は使っていいですか?
A. 現在はペーパーバッグ法は推奨されていません。ゆっくりした呼吸を促すことと、落ち着いた環境を作ることが基本的な対応です。

Q. 急変対応に自信がないのですが、どうすれば良いですか?
A. 最初は誰でも不安です。日頃からシミュレーション研修に参加したり、先輩の対応を見て学ぶことが大切です。いざというときは一人で抱え込まず、すぐに応援を呼ぶことを徹底してください。

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