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摂食障害ってどんな病気?精神科看護師がわかりやすく解説
「摂食障害って拒食症のこと?」「食べるのが怖いのはなぜ?」「どうすれば治るの?」
摂食障害は、食行動に関わる深刻な精神疾患です。若い世代を中心に多く見られますが、正しく理解されていないことも多いです。この記事では、精神科看護師として長年働いてきた私が、摂食障害についてわかりやすく解説します。
摂食障害とは何か——基本をわかりやすく
摂食障害とは、食行動・体重・体型に関する考え方や行動が極端になってしまい、心身に深刻な影響を与える病気です。「意志が弱いから食べられない」「わがままで食べない」のではなく、脳・心のバランスが崩れることで起きる病気です。本人の意志でコントロールするのが難しい状態であることを、まず理解することが大切です。
なかなか「病気として」理解してもらえないことが多く、「食べればよくなる」と思われがちです。でも摂食障害は、心理的な影響が非常に大きく、治療にも時間がかかることが多いです。
摂食障害の主な種類
神経性やせ症(拒食症)
体重増加への強い恐怖から、食事を極端に制限してしまう状態です。体重が著しく低下しているにもかかわらず、「まだ太っている」という歪んだ体型認識があることが特徴です。無月経・低体温・低血圧などの身体症状も出てきます。
神経性過食症(過食症)
短時間に大量の食べ物を食べてしまう(過食)を繰り返し、その後罪悪感から嘔吐・下剤の使用などの「排出行動」を行ってしまう状態です。体重は正常範囲のことが多く、外見からはわかりにくいため、周りに気づかれにくいことがあります。
過食性障害(むちゃ食い障害)
過食を繰り返すが、排出行動を伴わない状態です。過食後に強い罪悪感・自己嫌悪を感じることが特徴です。
摂食障害の原因
摂食障害の原因は一つではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
- 心理的な要因:低い自己肯定感・完璧主義・ストレス・トラウマ体験
- 社会的な要因:「痩せていることが美しい」という社会的プレッシャー・SNSでの体型比較
- 生物学的な要因:遺伝的な要因・脳内の神経伝達物質のバランスの乱れ
特に女性は見た目へのこだわりが強くなりやすく、極端なダイエットが摂食障害に発展することがあります。「痩せたくてダイエットを始めたら止まらなくなった」というケースが多く、ダイエットが摂食障害の引き金になることがあります。
摂食障害の身体への影響
摂食障害は長期化すると、全身に深刻な影響が出てきます。
- 栄養不足による心臓・腎臓・骨などへの障害
- 繰り返す嘔吐による歯のエナメル質の溶解・食道の損傷
- 電解質異常(低カリウム血症など)による心臓への影響
- 骨粗しょう症・無月経・不妊
- 最悪の場合、死に至ることもある(精神疾患の中で最も死亡率が高い)
摂食障害の治療——時間がかかることを理解する
摂食障害の治療は、心理的な影響が大きいため、時間がかかることが多いです。「食べれば治る」という単純な問題ではなく、食行動の背景にある心理的な問題に取り組むことが必要です。
栄養・身体管理
神経性やせ症では、まず栄養状態の改善・体重回復が最優先です。重症の場合は入院が必要になることがあります。
心理療法
認知行動療法(CBT)・家族療法など、食行動・体型への歪んだ考え方を修正していく治療が中心になります。
薬物療法
うつ症状・不安感・強迫症状などに薬が使われることがあります。
危険な「痩せ薬」に注意——マンジャロについて
最近、糖尿病治療薬として承認された「マンジャロ(チルゼパチド)」が、ダイエット目的で使用されることが問題になっています。
マンジャロは食欲を抑える効果があるため、体重減少につながることがありますが、ダイエット目的での使用は承認されていません。また、吐き気・嘔吐・低血糖・膵炎などの副作用があり、医師の管理なしに使用することは非常に危険です。
現在、ネットで購入できるケースもあり、安易に手を出す方が増えていますが、自己判断での使用は絶対に避けてください。摂食障害の傾向がある方がこういった薬に依存してしまうリスクも懸念されています。「痩せたい」という気持ちは理解できますが、安全・健康を最優先に考えることが大切です。
どう声をかければいいか——関わり方のコツ
摂食障害の方への声かけは難しいですが、以下のことを意識すると助けになります。
効果的な声かけ
- 「心配しているよ」「そばにいるよ」という気持ちを伝える
- 「食べること」ではなく「気持ち」に寄り添う(「最近どう?」「辛いことはある?」)
- 「一緒に先生に相談してみようか」と専門家への相談を促す
- 話を聴く姿勢を持つ——解決しようとしなくていい
言ってはいけない言葉
- 「食べれば治るよ」「少しくらい食べられるでしょ」
- 「わがままだ」「意志が弱い」
- 「そんなに痩せていないよ」(本人の認識を否定する)
- 「頑張って食べて」(プレッシャーになる)
摂食障害はなかなか「病気として」理解してもらえないことが多いです。「食べれないということ自体が理解されない」「食べればよくなると思われる」——そういった経験が、本人をさらに孤立させてしまうことがあります。まず「これは病気なんだ」という理解を持つことが、関わりの第一歩になります。
家族・周りの人ができること
責めない・プレッシャーをかけない
「なんで食べないの?」という言葉は、本人をさらに追い詰めてしまいます。
一緒に専門家への相談を考える
「一人で抱え込まなくていい」「一緒に先生に相談しよう」と寄り添うことが助けになります。
家族自身も支援を受ける
摂食障害の家族を支えることは、家族にとっても大きな負担になります。家族向けの支援グループ・相談窓口を活用することも大切です。
精神科の現場で感じること
摂食障害の患者さんと関わっていて感じるのは、「食べられない・食べてしまうのは、心の苦しさの表れ」ということです。食行動の問題の背景には、低い自己肯定感・ストレス・トラウマ・孤独感などが隠れていることが多いです。
「食べることだけ」に焦点を当てるのではなく、その人が抱えている心の苦しさに寄り添うことが、摂食障害の関わりで一番大切だと感じています。治療には時間がかかりますが、焦らず・責めずに関わり続けることが回復への道につながります。
まとめ
- 摂食障害は意志の弱さではなく、脳・心のバランスが崩れることで起きる病気
- 「食べれば治る」は誤解——心理的な影響が大きく治療に時間がかかる
- 女性は見た目へのこだわりから極端なダイエットに陥りやすい
- マンジャロなどの痩せ薬の安易な使用は非常に危険
- 声かけは「食べること」ではなく「気持ち」に寄り添う
- 家族は責めず・プレッシャーをかけず、一緒に専門家に相談する
- 食行動の背景にある心の苦しさに寄り添うことが大切
よくある質問
Q. 摂食障害はどこで診てもらえますか?
A. 精神科・心療内科・摂食障害専門外来で診てもらえます。身体症状が強い場合は内科との連携が必要になることもあります。まずかかりつけ医に相談してみてください。
Q. マンジャロをダイエット目的で使っていいですか?
A. 使用しないでください。マンジャロは糖尿病治療薬であり、ダイエット目的での使用は承認されていません。副作用も多く、医師の管理なしに使用することは非常に危険です。
Q. 摂食障害は自然に治りますか?
A. 軽症の場合は改善することもありますが、多くの場合は専門的な治療が必要です。放置すると身体への影響が深刻になることがあります。早めに専門家に相談することをおすすめします。
Q. 家族が摂食障害かもしれません。どうすればいいですか?
A. まず責めずに「心配している」という気持ちを伝えてください。「食べること」ではなく「気持ち」に寄り添いながら、一緒に専門家への相談を考えてみてください。
