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PTSDとはどんな病気か|症状・原因・治療を精神科看護師が正直に話します
「PTSDってよく聞くけど、どんな病気なの?」「トラウマとPTSDって同じこと?」「PTSD、自分や家族がなったらどうすればいい?」
PTSDという言葉は広く知られるようになりましたが、正確にどんな病気なのかはわかりにくいことが多いです。この記事では、精神科看護師として長年働いてきた私が、PTSDについてわかりやすく解説します。
PTSDとは何か——基本をわかりやすく
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、強烈なショックや恐怖を体験した後に、その記憶が繰り返しよみがえったり・強い不安や恐怖が続いたりする状態です。
「心の傷(トラウマ)」が原因で起きる病気で、体験した出来事が「過去のこと」として整理されず、現在も続いているように感じてしまうのが特徴です。トラウマは「心の傷そのもの」を指し、PTSDはその傷が原因で日常生活に支障が出ている状態を指します。
どんな出来事がきっかけになるの?
PTSDのきっかけになる出来事には、以下のようなものがあります。
- 戦争・紛争の体験
- 自然災害(地震・洪水・火災など)
- 交通事故・重大な事故
- 性的暴力・身体的暴力
- 虐待(子どもの頃の虐待を含む)
- 大切な人の突然の死
- 犯罪被害
「自分が体験した」だけでなく、「目の前で誰かが被害を受けるのを目撃した」「大切な人がそういった体験をしたと知った」場合でも、PTSDになることがあります。体験の「大きさ」ではなく、本人がどれだけの恐怖・無力感を感じたかが重要です。
PTSDの主な症状4つ
① 再体験症状(フラッシュバック)
体験した出来事が、突然・鮮明に頭によみがえってくる症状です。まるで今その出来事が起きているように感じることがあります。夢の中でも繰り返し体験することがあります(悪夢)。
② 回避症状
体験した出来事を思い出させるもの(場所・人・においなど)を避けようとする症状です。事故現場の近くを通れない・特定の音を聞くと具合が悪くなる・話題を避けるなどの行動が出てきます。
③ 過覚醒症状
常に緊張・警戒している状態が続く症状です。眠れない・些細なことで驚く・集中できない・イライラしやすい——こういった状態が続きます。
④ 認知・感情の変化
「自分が悪かった」という強い自責感・感情が麻痺したように感じる・楽しかったことが楽しめなくなる・人を信頼できなくなるなどの変化が起きます。
よくある事例——こんなパターンがあります
個人が特定できない形で、PTSDによくある一般的なパターンをご紹介します。
事例①:交通事故後のケース
交通事故に遭った後から、車のエンジン音を聞くたびに事故のときの記憶がよみがえるようになった。電車やバスには乗れるが、車に乗ることができなくなった。夜は事故の夢を繰り返し見て、眠れない日が続いている。「もう時間が経ったのに、なぜ忘れられないのか」と自分を責めていた。
事例②:職場でのハラスメントのケース
職場での長期にわたるハラスメントがきっかけで、上司の声・怒鳴り声に似た音を聞くだけで体が硬直してしまうようになった。転職後も「また同じことが起きるかもしれない」という恐怖が続き、新しい職場でも緊張が続いている。「なぜ新しい職場でも怖いのか」と自分が理解できずに悩んでいた。
事例③:子どもの頃の体験のケース
子どもの頃に虐待を受けた体験が、大人になってから突然フラッシュバックとして出てきた。テレビで似たような場面を見るたびに気分が悪くなる。「もう大人なのに、なぜ今さら」と思いながらも、フラッシュバックを止めることができずに苦しんでいた。
これらの事例に共通しているのは、「なぜ忘れられないのか」「なぜ自分だけこんなに苦しいのか」と自分を責めてしまうということです。PTSDは意志の力でどうにかなるものではなく、脳の記憶処理に問題が生じている状態です。
PTSDの治療方法——詳しく解説
① カウンセリング・心理療法が中心
PTSDの治療は、薬よりもカウンセリング・心理療法が中心になります。最近ニュースなどでも取り上げられることが増えましたが、PTSDを抱える方が専門のカウンセラー・心理士に相談することで、回復に向かうケースが多いです。
「話を聞いてもらうだけで効果があるの?」と思う方もいますが、PTSDの心理療法は単なる「話し合い」ではなく、脳の記憶処理を整えていく専門的な治療です。
② EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
PTSDに対して特に効果が認められている治療法です。セラピストの指の動きを目で追いながら、トラウマ記憶を少しずつ処理していきます。
「なぜ目を動かすの?」と不思議に思うかもしれませんが、眼球運動が脳の情報処理を助けると考えられています。1回のセッションで劇的に変わるわけではありませんが、繰り返すことでフラッシュバックの強さが和らいでいきます。
③ 持続エクスポージャー療法
安全な環境の中で、トラウマ体験を少しずつ思い出すことで、恐怖反応を和らげていく治療法です。「怖いのに思い出すの?」と感じるかもしれませんが、専門家のサポートのもとで少しずつ進めるため、一人で思い出すのとは全く異なります。
④ 薬物療法
抗うつ薬(SSRI)が症状の改善に使われることがあります。薬だけで完治するわけではありませんが、心理療法と組み合わせることで効果が高まります。眠れない・強い不安がある場合に、まず薬で症状を和らげてから心理療法を進めることもあります。
⑤ 安全・安心な環境を整える
治療と並行して、安全で安心できる環境を整えることがとても大切です。信頼できる人との関係・安心できる場所があることが、回復の基盤になります。
日常生活での対処法
フラッシュバックが起きたときのグラウンディング
「今・ここにいる」ということを意識することが助けになります。深呼吸をする・手のひらをぎゅっと握る・足の裏を床につける・周りにあるものの色を数える——こういったグラウンディングの技法が、フラッシュバックから現実に戻るのに役立ちます。
自分のペースを大切にする
「早く回復しなければ」と焦らないことが大切です。PTSDの回復には時間がかかることがあります。
家族・周りの人ができること
「話してくれてありがとう」と受け止める
否定せず・アドバイスしすぎず、まず受け止めることが大切です。
「なぜ忘れられないの?」と言わない
PTSDは「忘れようとしても忘れられない」病気です。「もう過去のことじゃないの?」という言葉は、本人をさらに傷つけることがあります。
一緒に専門家への相談を考える
「一人で抱え込まなくていい」「専門家に相談してみよう」と、一緒に考えてあげることが助けになります。
精神科の現場で感じること
PTSDは、外から見えにくい病気です。見た目では「普通」に見えるため、「本当に病気なの?」と思われてしまうことがあります。でも、PTSDを抱えている方が日々感じている苦しさは、本物です。
精神科で働いていて感じるのは、「安心できる場所と人の存在が、回復の大きな力になる」ということです。完璧に理解できなくても、「あなたのそばにいる」という姿勢が、PTSDを抱える方の支えになります。
まとめ
- PTSDは強いトラウマ体験後に、記憶がよみがえり日常生活に支障が出る状態
- 症状は「フラッシュバック・回避・過覚醒・認知や感情の変化」の4つ
- 「なぜ忘れられないのか」と自分を責めてしまうケースが多い
- 治療はカウンセリング・心理療法(EMDR・持続エクスポージャー療法)が中心
- 薬物療法と心理療法を組み合わせることで効果が高まる
- 家族は「受け止める・急かさない・専門家への相談を一緒に考える」姿勢が大切
- 安心できる場所と人の存在が、回復の大きな力になる
よくある質問
Q. PTSDは自然に治りますか?
A. 症状が軽い場合は時間とともに改善することもありますが、多くの場合は専門的な治療が必要です。症状が2週間以上続く場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
Q. カウンセリングはどこで受けられますか?
A. 精神科・心療内科・メンタルクリニックで受けられます。心理士・カウンセラーが対応してくれます。「PTSDかもしれない」と感じたら、まず受診して相談してみてください。
Q. 子どもの頃の体験でもPTSDになりますか?
A. なります。子どもの頃の虐待などがきっかけになることもあります。大人になってから症状が出てくることもあります。
Q. 家族がPTSDかもしれません。どうすればいいですか?
A. まず本人の気持ちを受け止め、一緒に専門家への相談を考えてみてください。「そばにいる」という姿勢が大切です。
