強迫性障害ってどんな病気?精神科看護師がわかりやすく解説
「何度も手を洗わないと不安」「家の鍵を何度も確認してしまう」「『大丈夫』とわかっていても、確認をやめられない」
こういった経験、ありませんか?
誰にでも「気になって確認したくなる」ことはあります。でも、それが日常生活に大きな支障をきたすほど繰り返される場合、「強迫性障害」という病気の可能性があります。
この記事では、精神科看護師として働く私が、強迫性障害についてわかりやすくお伝えします。
強迫性障害とはどんな病気?
強迫性障害は、「強迫観念」と「強迫行為」が繰り返され、日常生活に大きな支障をきたす病気です。
強迫観念とは、繰り返し浮かんでくる、不安や不快感を伴う考えやイメージのことです。「鍵をかけ忘れたかも」「手が汚れているかも」「誰かを傷つけてしまったかも」——こういった考えが、何度も何度も浮かんできます。
強迫行為とは、その不安を打ち消すために行う行動のことです。「何度も鍵を確認する」「何度も手を洗う」「同じ動作を繰り返す」など。
本人は「こんなことをしても意味がない」「やりすぎだ」とわかっていることが多いです。でもやめようとすると強い不安に襲われるため、やめられません。これが強迫性障害の大きな特徴です。
100人に1〜2人がかかるとされていて、決して珍しい病気ではありません。
強迫性障害の主な症状・種類
確認行為
鍵・ガスの元栓・電気のスイッチなどを、何度も確認してしまいます。「閉めたはず」とわかっていても、確認しないと外出できない・出かけてからも気になって戻ってしまう、ということが起こります。
不潔恐怖・洗浄強迫
「汚れている」「細菌がついている」という不安から、手洗い・洗濯・掃除を何度も繰り返します。手の皮がボロボロになるほど洗い続けることもあります。
加害恐怖
「自分が誰かを傷つけてしまったかもしれない」「車で人をひいてしまったかもしれない」という考えが繰り返し浮かびます。実際にはそんなことをしていなくても、強い不安に襲われます。
数字・対称性へのこだわり
特定の数字(縁起が悪いと感じる数字など)を避ける、物の位置・対称性が揃っていないと落ち着かない、というパターンもあります。
儀式的な行動
「決まった順序で物事をしないと、悪いことが起きる気がする」という考えから、特定の手順・儀式的な行動を繰り返すことがあります。
なぜ強迫性障害になるの?
強迫性障害の原因は完全にはわかっていませんが、以下のことが関係していると考えられています。
脳の機能の問題
脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)のバランスや、脳の特定の部位の機能異常が関係していると考えられています。
ストレス・環境要因
強いストレス・大きな環境の変化が発症のきっかけになることがあります。
性格傾向
完璧主義・責任感が強い・心配性といった性格傾向がある方に、発症しやすい傾向があると言われています。
「神経質な性格だから」という単純なものではなく、脳の機能と環境要因が組み合わさって起こる病気です。
「こだわり」「神経質」との違いは?
「私も確認することが多いけど、これも強迫性障害なの?」と思う方もいるかもしれません。
一番の違いは、日常生活への支障の大きさです。
「気になって一応確認する」程度であれば、病気とは言えません。強迫性障害は、確認・洗浄などの行為に1日に何時間もかかる、外出・仕事・人間関係に大きな支障が出る、本人がそれをやめたいのにやめられず苦しんでいる——というレベルのものです。
「神経質な人」と「強迫性障害」を簡単に結びつけるのは適切ではありません。
治療方法
薬物療法
抗うつ薬(SSRI)が効果的とされています。効果が出るまで数週間〜数ヶ月かかることもありますが、継続することが大切です。
認知行動療法(特に「曝露反応妨害法」)
不安な状況にあえて身を置き(曝露)、強迫行為をせずに我慢する(反応妨害)ことを少しずつ繰り返す治療法です。専門家のサポートのもとで段階的に行うことで、「確認しなくても大丈夫だった」という経験を積み重ねていきます。
周りの人ができること
強迫行為に巻き込まれない
家族が「確認は済んだから大丈夫」「私が代わりに確認したから」と本人の強迫行為に付き合ってしまうことがあります。これは「巻き込まれ」と呼ばれ、一時的には本人を安心させますが、長期的には症状を悪化させてしまうことがあります。
とはいえ、急に対応を変えると本人の不安が強くなることもあるため、対応を変える際は主治医と相談しながら進めることが大切です。
「やめなさい」と責めない
「いつまで確認してるの」「もうやめなさい」という言葉は、本人を追い詰めてしまいます。本人自身も「やめたい」と一番強く思っているからです。
治療を続けることを支える
強迫性障害は治療に時間がかかることが多い病気です。「治療を続けていること」自体を認めて、長い目で見守る姿勢が大切です。
一緒に考えてみて——精神科の現場で思うこと
正直なところ、強迫性障害は精神科病棟で過ごす時間が長い患者さんは、統合失調症やうつ病に比べると少ない印象があります。外来での治療が中心になることが多い病気だからかもしれません。
ただ、以前関わった入院患者さんの中に、こんな方がいました。歯磨きを一日に何度も、しかも一回に何十分もかけて行い、歯ぐきから出血するほどになっていました。歯ブラシや歯磨き粉にも強いこだわりがあり、「これでないと困る」とおっしゃっていました。
当時は「潔癖症からなのかな」と漠然と感じていましたが、こうして整理してみると、これは強迫性障害の症状(洗浄強迫・確認行為・道具へのこだわり)が組み合わさったものだったのだと思います。「やめたいけどやめられない」「これで合っているか不安」という気持ちが、行動として表れていたのかもしれません。
「確認しないと不安で仕方ない」「わかっているのに止められない」という感覚は、症状の程度こそ違いますが、誰にも少しは心当たりがあるのではないでしょうか。
「これくらい誰にでもあること」と思われがちな分、本人が「自分はおかしいのかもしれない」と一人で抱え込んでしまいやすい病気でもあると感じます。だからこそ、「それは病気の症状であって、あなたの性格の問題ではない」と伝えられることが、関わる側にとって大切なのだと思います。
まとめ
強迫性障害についてお伝えしました。
- 強迫観念(繰り返し浮かぶ不安な考え)と強迫行為(それを打ち消す行動)が特徴
- 「わかっているけどやめられない」という苦しさがある
- 確認行為・洗浄強迫・加害恐怖など、さまざまなパターンがある
- 「神経質」とは違い、日常生活に大きな支障が出るレベルのもの
- 薬物療法・認知行動療法(曝露反応妨害法)で症状を軽減できる
- 周りの人は「巻き込まれ」に注意しながら、責めずに治療を支える
「わかっているのにやめられない」という苦しさは、本人にとって本当に辛いものです。一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することをおすすめします。
よくある質問
Q. 強迫性障害は自分の意志で治せますか?
A. 意志だけで治すのは難しいことが多いです。脳の機能が関係する病気なので、専門的な治療(薬物療法・認知行動療法)が効果的です。
Q. 子どもにも強迫性障害は起こりますか?
A. 起こります。子どもの場合、「儀式的な行動」「確認行為」などが見られることがあります。学校生活に支障が出ている場合は、児童精神科への相談をおすすめします。
Q. 家族の確認行為に毎回付き合ってしまいます。やめた方がいいですか?
A. 「巻き込まれ」が症状を長引かせることはありますが、急にやめると本人の不安が強くなることもあります。対応を変えるときは、主治医に相談しながら進めることをおすすめします。
Q. 強迫性障害とパニック障害は関係がありますか?
A. どちらも不安が関係する病気ですが、症状の現れ方は異なります。強迫性障害は「強迫観念と強迫行為」、パニック障害は「突然の発作」が特徴です。両方を併発することもあります。
