統合失調症の人に言ってはいけない言葉はある?精神科看護師が解説
「どう声をかければいいかわからない」「良かれと思って言った言葉が傷つけてしまった」「何が正しい言葉かけなの?」
統合失調症を持つ方と関わるとき、言葉の選び方に悩む方はとても多いです。家族・友人・職場の人・そして看護師も、「何を言えばいいのか、何を言ってはいけないのか」と迷うことがあります。
この記事では、精神科看護師として26年働いてきた私が、統合失調症の方との関わりで気をつけてほしい言葉と、代わりにどう伝えればいいかをお伝えします。
そもそも「言葉が傷つける」理由
統合失調症の方は、一般的に感受性が高く、言葉の影響を受けやすい傾向があります。また、妄想・幻聴などの症状がある時期は、言葉の受け取り方が通常と異なることもあります。
良かれと思って言った言葉が、予想外の形で受け取られてしまうことがあるのは、本人の性格や「メンタルが弱い」からではなく、病気の特性によるものです。
言ってはいけない言葉①「それは気のせいだよ」
「声が聞こえる」「誰かに監視されている」という訴えに対して、「それは気のせいだよ」「そんなことないよ」と否定することは、本人にとって「わかってもらえなかった」という深い孤独感につながります。
本人にとってその体験は「本物の現実」として感じられています。否定されると、信頼関係が一気に崩れてしまいます。
【現場での失敗例】
夜勤中、「また声が聞こえてきた」と訴える患者さんに、忙しい中で「大丈夫ですよ、気のせいです」と声をかけてしまったことがあります。患者さんはその後部屋に戻り、翌朝「昨日の看護師さんには話したくない」と言っていたと報告がありました。「わかってもらえなかった」と感じさせてしまったことを、今でも反省しています。
代わりにこう言う
「それは怖かったね」「不安だったんだね」——妄想・幻聴の内容を肯定も否定もせず、その人が感じている感情に寄り添う言葉をかけることが大切です。
言ってはいけない言葉②「頑張れ」
一般的には励ましの言葉ですが、統合失調症の方にとっては「今の自分では足りない」というプレッシャーに聞こえることがあります。すでに病気と戦いながら毎日を過ごしている方に「頑張れ」と言うのは、「今十分に頑張っていない」と伝えているように響くことがあります。
【よくある場面】
「退院したら頑張ってね」という言葉は、励ましのつもりで自然と出てしまいがちです。私自身も、ついつい口から出てしまうことがあります。でも退院を前に不安を抱えている患者さんにとっては、「頑張らなければいけない」というプレッシャーになることがあると知ってから、意識して言い換えるようにしました。
代わりにこう言う
「今日もここにいてくれてよかった」「ゆっくりでいいよ」——今のその人の存在を認める言葉が、励ましよりずっと力になることがあります。
言ってはいけない言葉③「なんでそんなこと考えるの?」
妄想や独特な考え方に対して「なんでそんな考え方するの?」と言うと、本人は「自分はおかしい」と感じてしまいます。統合失調症の症状は、本人の意志でコントロールできるものではありません。
代わりにこう言う
「そう感じているんだね」「話してくれてありがとう」——考え方を否定せず、話してくれたこと自体を受け止める姿勢が大切です。
言ってはいけない言葉④「薬を飲めばよくなるよ」
服薬の大切さを伝えたいという気持ちはわかりますが、この言葉は「薬さえ飲めば解決する簡単な問題だ」と受け取られることがあります。また、薬への抵抗感がある方にとっては、プレッシャーになったり、逆に拒薬につながることもあります。
代わりにこう言う
「薬について不安なことはある?」「先生に相談してみようか」——本人の気持ちを確認しながら、一緒に考えるスタンスが大切です。
言ってはいけない言葉⑤「普通にすればいいじゃない」
「普通」という言葉は、本人にとって「自分は普通ではない」という烙印のように聞こえることがあります。
代わりにこう言う
「あなたのペースでいいよ」「今のままで大丈夫だよ」——その人の「今」を認める言葉が、安心感につながります。
言ってはいけない言葉⑥「もう退院できるんじゃない?」
回復を期待しての言葉ですが、「早く戻らなければならない」というプレッシャーになります。特に退院・復職に不安を抱えている時期は、このような言葉が大きな焦りを生むことがあります。
代わりにこう言う
「焦らなくていいよ」「あなたのタイミングで大丈夫だよ」
わかっていても言ってしまうことがある——現場のリアル
正直に言うと、「言ってはいけない言葉」とわかっていても、忙しい現場ではついつい口から出てしまうことがあります。
「頑張ってね」「気のせいですよ」——これらは日常の会話で自然に出てくる言葉だからこそ、意識していないと使ってしまいます。私自身も、経験を積んだ今でも「あの言い方は良くなかったな」と振り返ることがあります。
大切なのは、言ってしまったあとに気づくことです。「さっきの言い方、伝わりにくかったかな」と思ったら、「さっきはうまく言えなかったけど、不安だったんだね」と後から言い直すことができます。完璧な言葉かけができる人はいません。気づいて修正できることが、成長につながります。
言葉よりも大切なこと
26年間精神科で働いていて感じるのは、言葉よりも「態度」や「雰囲気」が伝わるということです。
言葉が多少不器用でも、「この人は自分のことを大切にしてくれている」という感覚は、患者さんに伝わります。「何を言えばいいか」に悩みすぎるより、「この人のことをちゃんと見ていたい」という気持ちを持って関わることの方が、ずっと大切だと感じています。
また、言葉に詰まったときは「そうなんですね」とただ受け止めるだけでも十分です。沈黙も、大切なコミュニケーションのひとつです。
まとめ
- 「気のせいだよ」→ 感情に寄り添う言葉に
- 「頑張れ」→ 存在を認める言葉に
- 「なんでそんなこと考えるの?」→ 話してくれたことを受け止める言葉に
- 「薬を飲めばよくなるよ」→ 本人の気持ちを確認する言葉に
- 「普通にすればいいじゃない」→ 今のペースを認める言葉に
- 「もう退院できるんじゃない?」→ 焦らせない言葉に
- 言ってしまったあとに気づいて言い直すことも大切
- 言葉より「態度」や「気持ち」が伝わることを忘れずに
よくある質問
Q. 妄想の話をされたとき、どこまで聞けばいいですか?
A. 長時間続く場合は、「そうなんですね。少し休みませんか?」と自然に切り替えてOKです。全部聞き続ける必要はありません。
Q. 何を言っても怒られてしまいます。
A. 特定のスタッフには穏やかなのに別のスタッフには激しく反応するというのは、精神科ではよくあることです。病気の症状によるものであり、あなたのせいではない場合がほとんどです。先輩に相談してみてください。
Q. 家族として何気なく言ってしまった言葉が傷つけたかもしれません。
A. 完璧な言葉かけができる人はいません。「大切にしたい」という気持ちがあれば、それは伝わっています。気になる場合は「さっきの言い方、気になってしまって」と一言添えるだけで十分です。
Q. 沈黙が続くとき、何か言った方がいいですか?
A. 無理に言葉を埋めなくて大丈夫です。ただそばにいることが、言葉以上の安心感につながることがあります。
